プロジェクトゲーム 2 再上京

電話の向こうは鹿元社長に代わった。

「大手の玩具会社、ダッコ社(仮名)からゲーム企画の大きな仕事が入ってね、この仕事のアートディレクターは九条君しか出来ないと妻に言われて電話してみたんだ。どうだろうやってくれないか?」

そう言われて断るわけが無いが、とりあえず

「考えてみます」とその場は答えておいたがその場で決意は決めていた。

父と母の承諾を得て1週間後には再上京する事にした。

 

手荷物をバッグに詰め、新幹線でモンスター都市東京に向かった。山手線に乗り換え、恵比寿駅で下車。

歩いて代官山に向かう、教えられたマンションはでかいマンションだった。1年前のエムデザインは渋谷駅近くの小さなボロビルにあったがここはそことは全くイメージが違う。何かで儲けたのだろうか?。

 

ドアを開けると社長夫人が迎えてくれた。

「九条君久しぶり、よく来てくれました。必ず来てくれると思っていたのよ」

そして3KDKの部屋の中を案内してくれ、スタッフにも紹介してくれた。

「皆さん、彼が今日大阪から来てくれた九条君です」

以前にいたスタッフは全く居なかった。新しいスタッフばかりで皆僕と年が近そうだ。

男が2人で女が3人、何とか上手くやって行けそうな気がした。女の一人は大阪出身で丸っきり大阪弁のソノ子。

僕達デザイナーの制作室はベランダ側の部屋でそこからは、代官山の風景と山手線が見渡せた。

ここなら気分は最高だ。

どんな難しい仕事でもこなせる気がする。

 

お茶タイムになった。コーヒーメーカーで社長夫人がコーヒーをドリップしてくれた。

女性スタッフ3人達とコーヒーを飲む。

昨日までの仕事環境とは全く違う。

夫人が僕を紹介してくれた。

「九条君は前の事務所で働いてもらっていたの。今度のゲーム企画は九条君を中心に展開してもらいますので皆さんよろしくね」

女性スタッフの1人は僕のタイプに近いリツ子。自分のタイプの女性と仕事が出来るとは最高の仕事環境だ。

 

そのうち鹿元社長が現れた。

「九条君、君が生活するアパートをこれから案内します。ここのすぐ近くで歩いても10分ぐらいのところだ」

社長の車でアパートに到着。

そこはアパートと言っても普通の大きな民家の二階だった。

2部屋あり、1部屋は僕が寝泊まりに使い、儲けた1部屋は会社の特別企画室として使うと言う事だった。

そして風呂場を開けてみて驚いた。浴槽はひのき作りでひのきの香りが漂っている。これなら気持ちよく入浴できそうだ。そもそもひのきの風呂なんて入った事が無いのでかなり満足していた。

 

エムデザインに帰り自分のデスクを整理、必要な画材を地球堂に注文してその日の仕事は終了。

母に電話して楽しく仕事できそうな事を伝えた。

 

そして民家二階のアパートに帰りひのき風呂に入り、まっさらなフトンで熟睡した。