プロジェクトゲーム 3 ダッコ社へ
次の日、朝から鹿元社長の運転で2人でダッコ社(仮名)に出かけた。
ダッコ社に着いて受付を通すと2階の広い会議室に案内された。
お茶を飲んで待っていると仕事発注の担当者3名が現れた。
僕は担当者達と名刺を交換する。
「彼がゲーム企画とデザインを担当する天才デザイナーの九条君です」と社長は僕を紹介した。
天才デザイナーとは大袈裟だが、ここはユーモアとはったりゲーム感覚を利かせたんだろう。何しろここは玩具会社だ。
担当者はボードゲームをテーブルに置いた。
「これがアメリカで流行っているミリオンゲーム(仮名)を当社で日本版として販売している物です。実はこんなボードゲームを当社で新しくオリジナルで企画販売したいのです。で・・・エムデザインさんにゲームの企画とデザインをお願いしたいわけです」
なるほどと僕は思った。内なる心が『プロジェクトが始まるぞ!』と言っていたのはこの事に違いない。これをやれば永遠に僕のデザインがこの世界に残る仕事になるに違いない。これは頑張るしかない。
そんな打ち合わせを終わって。社長の車で帰路に着いた。
「ゲームの名前は何がいいかな?」と社長は言った。
「【プロジェクトゲーム(仮名)】にしましょう」
「【プロジェクトゲーム】?なかなか語呂がいいね」
「まだ閃いただけですけど、内容は、ある男あるいは女が色々金儲けのプロジェクトをやって失敗を重ねながら成功への階段を登って行く。勿論ライバルや障害も現れる。それをゲーム的に展開するわけです。あと恋愛話しを入れてもいいかもしれませんね」
「流石は九条君・・・もうそこまで考えているとは天才だ」
そして頭の中ではもうそのデザインも浮かんでいた。
エムデザインに帰ると応接室に全員集合した。社長がテーブルにミリオンゲームを広げた。
「これがダッコ社から預かってきたミリオンゲームです。とりあえず仕事内容はこのゲームを皆でやって内容を理解してもらいます。その次はこれを参考に新しいゲームを企画して欲しい。まあ出来ればこれを越える面白いゲームが出来ればいいんだが・・・」と言って社長は少し笑った。
さっそく僕と女性スタッフ3人でミリオンゲームをやる事にした。
仕事とは言え、コーヒーを飲みながらゲームをやればあいんだからこんな楽しい事は無い。
大阪で昨日までシンナーの匂いを嗅ぎながら機械の焼き付け塗装の仕事をしていた時とはえらい違いだ。しかも1人は完全に僕のタイプだ。これはやるしかない。
必ず大ヒットするゲームを作り出すぞ!と決意を固めた。
昼食は女性スタッフ3人と外食する事になった。
男スタッフはどっかで弁当を買ってくるらしい。
ランチタイムの洒落た喫茶店に入った。ランチを食べ終わりコーヒーを飲みながら、それとなくリツコに聞いてみた。
「恋人とかいるの?」
「もう結婚が決まっているカメラマンがいるのよ」
それを聞いてガッカリした。コーヒーの味が急に不味くなった気がした。
まあ世の中そんなもんだと思いエムデザインに帰りまたミリオンゲームに夢中になってやり始めた。
※こう言う風に書いていて、今思えば不思議だがゲームの著作権とか売れた場合のロイヤリティーはどうなっているのかには全く考えていなかった。著作権について調べる事もしなかった。著作権に、ついて調べたのはつい最近の事だった。